Nawshicaの自然とともに

2019年4月にフリーとなり、現在は Nature Guide & Research として鳥や植物、昆虫の調査や観察会講師、ガイドなどをしています。このブログは​ 20​10​/04​/2​9 に yahooブログで開設し、2019/09/09 にこちらに移行しました。このブログでは日々の活動で見た生き物を中心に情報を発信しています。

ニホントカゲとヒガシニホントカゲ

日本に住むトカゲは長らくニホントカゲ1種と思われていましたが、DNAを調べることで東日本に住むヒガシニホントカゲ(Plestiodon finitimus)、西日本に住むニホントカゲ(Plestiodon japonicus)、伊豆半島から伊豆諸島にいるオカダトカゲ(Plestiodon latiscutatus)の3種であることがわかっています。


ニホントカゲとヒガシニホントカゲの識別は外形的には額にある長い六角形の鱗の前方にある1対の鱗(前額板)が面で接しているか、あるいは離れているかでほぼ判定できるようです。残念ながらこれだけでは8割程度しか見分けられないそうですが、遺伝子を調べるのはなかなか難しいので、とりあえず前額板の配置を手がかりに両種の境界線がどうなっているのかを調べてみました。

ニホントカゲとヒガシニホントカゲの境界線は若狭湾から琵琶湖を縦断し、三重県内で中央構造線沿いに西走して和歌山県に抜けるラインとなっており、我が家の近くにその境界がありそうです。中央構造線ということで大阪府と和歌山県の府県境にある和泉山脈がその境界かと考え、我が家はその南側なのでヒガシニホントカゲではと思って庭にいるトカゲを撮影しました。

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前額板が面で接していますので、ニホントカゲだ! ということは境界線は? と思って分布図の境界線をよく見ると、どうももっと南にある有田川沿いが境界線のように見えます。

続いて奈良県の御手洗渓谷で見つけたトカゲは?

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前額板が左右に離れていますのでヒガシニホントカゲのようです。縞模様があるのはまだ成体ではないからです。

続いて田辺市ひき岩で見つけたトカゲ。ここは和歌山のずっと南なので・・・

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前額板が接しています! あれれ? ニホントカゲ? 海岸べりにニホントカゲが分布しているの?

このあと同じく田辺市奇絶峡で見つけたトカゲは?

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やっぱり前額板が接しています。ニホントカゲのようです。

今度は有田川より少し北側の有田川町生石高原で見たトカゲは?

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こちらは前額板が離れています! ヒガシニホントカゲ? いったいどうなってるの?

そういえば岩出市げんきの森でもトカゲの写真を撮っていました。改めて見てみると、

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前額板がはっきり左右に離れているではないですか! ヒガシニホントカゲ?? え~~??

さらに、ちょっと前に兵庫県六甲山に行ってきた時に見つけたトカゲは?

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前額板がこれまた明瞭に離れています。ヒガシニホントカゲ??

同じく兵庫県の鉢伏高原では・・・

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前額板がくっついています。こちらはニホントカゲ^^

それにしてもこれはいったいどういうことなんでしょうか? 分布図が間違っているのか、前額板だけで分類しようとしたことが間違いなのか、混生地域があるのか、もう少し調べてみたいと思います。

三重県の方からの情報では、今のところ全てヒガシニホントカゲのようです。和歌山県、奈良県、滋賀県など境界線がありそうなところはもちろん、飛び離れて見られる場所があるかも知れませんので、もしご興味をもたれた方はぜひ前額板のわかる写真を撮り、見せていただけましたらありがたいです。

夜の観察会2

続いて甲虫編です。

まずはヒゲナガゾウムシ科のウスモンツツヒゲナガゾウムシ(Ozotomerus japonicus

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触角の先端だけでなく途中にも膨らみがあるので、これは♂。2年前のこの観察会では♂だけでなく♀もやってきていて、まさかと思っていると、やっぱりもう1頭来ていました。

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♂にある触角の途中の膨らみがこちらにはありません。2年前と全く同じ状況になるとはびっくりです。

ゾウムシの仲間はもう一つ、ゾウムシ科のアシナガオニゾウムシ(Gasterocercus longipes)が来ていました。

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普通種のオジロアシナガゾウムシ(Mesalcidodes trifidus)を引き伸ばしたような感じのゾウムシです。

カミキリモドキ科のキイロカミキリモドキ(Xanthochroa hilleri)も来ていました。

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この仲間はいくつか近似種がいるのですが、複眼のサイズ、上翅の縦筋などから本種と判断しました。この仲間は身体にカンタリジンという毒素を持っていて、皮膚に付くと水ぶくれになりますので、絶対触らないようにと注意をしておきました。同じ毒素を持つアオカミキリモドキ(Xanthochroa waterhousei)も来ていたのですが、撮影する前に逃げられてしまいました。

もう一つ地味な甲虫が来ていました。ハムシダマシ科のヒゲブトハムシダマシ(Luprops cribrifrons)です。

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一見ゴミムシの仲間と見間違えそうな虫ですが、触角が違います。こういうのを見てワクワクするのはやっぱり変わってるのかも (A^^;)

夜の観察会

あっという間に7月も終わり、気付けば8月に突入してしまいました。一月以上も更新できずにがっかりでした。

さて、7月下旬に近くの山で夜の観察会があり、昆虫担当として参加することになりました。まずは夜の森を歩きながら子供たちに夜の生き物の解説。樹液にクワガタが来ていて取りたいコールがあったのですが、すぐそばにスズメバチが来ていたので却下。気持ちはよくわかるのですが、刺されると大変です (A^^;)  巨大なヤマナメクジ(Meghimatium fruhstorferi)やテン(Martes melampus)と思われる糞を見て子供たちは歓声を上げていました。

歩き終わってからは灯火採集。子供たちのお目当てはクワガタやカブトムシ(Trypoxylus dichotomus septentrionalis)なのですが、残念ながら全く来ておらず、大型のノコギリカミキリ(Prionus insularis)などに子供たちの関心は集中していました。ガもあまり人気がない昆虫ですが、大型のガはさすがに子供たちの目を引いていました。

まずはヤママユガ科のシンジュサン(Samia cynthia pryeri

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現地ではボクの勘違いで別の名前を言ってしまいました (A^^;)  守備範囲外のものの解説は気をつけないと (A^^;)  シンジュサンは神樹蚕、つまりニワウルシ(Ailanthus altissima)を食べる蚕のことですが、幼虫はこれ以外にもクヌギ(Quercus acutissima)、クスノキ(Cinnamomum camphora)、エノキ(Celtis sinensis)などいろいろな植物も食べるようです。どうせなら河川敷や道沿いで猛烈な繁殖力を見せている困り者のニワウルシをしっかり食べて欲しいものです。

アゲハモドキガ科のアゲハモドキ(Epicopeia hainesii hainesii)♂も来ていました。

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毒のあるジャコウアゲハ(Atrophaneura alcinous)に擬態していますが、一回り小さいガです。

こちらも大きいので人気があったガです。スズメガ科のトビイロスズメ(Clanis bilineata tsingtauica

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渋い色合いのスズメガです。幼虫はマメ科植物を食べるようで、この幼虫は中国では食用にされるらしいです (A^^;)

ガで子供たちが興味を引いたのはここまで。これ以外の小さなガは見向きもされませんでした (A^^;)  そういう中でも、このガは羽が不思議な形に切れ込んでいるのが目を引きました。シャクガ科のエグリエダシャク(Fascellina chromataria)です。

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こんなに羽がえぐれていて飛びにくくないのでしょうか? こんな方向に進化した理由がわかりません。

もうひとつ、名前がわかりそうな特徴的な模様の持つガが来ていたので、パチリ。

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ヤガ科のアミメケンモン(Lophonycta confusa)です。

ガはほんとに守備範囲外で、しかも種類がチョウに比べて圧倒的に多く、全く手に負えなかったのですが、素晴らしいサイトを見つけてからは絵合わせでそれなりに同定できるようになりました。それがこの「みんなでつくる日本産蛾類図鑑」です。


ここを見れば、特徴的な蛾であればほぼ同定ができるという素晴らしいサイトです。ただ問題はボクがスズメガ類などわかりやすいもの以外はどの蛾がなに科か見当すら付かない場合が多く、そういう時はこのアミメケンモンの時のように、全ての画像(1万枚以上!)を順に見て絵合わせをしないといけない、というたいへんな作業が待っている、ということなのです (A^^;)  早く蛾も守備範囲内に入ってほしいものです (A^^;)

蛾以外では珍しくツノトンボ科のツノトンボ(Hybris subjacens)が来ていました。

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トンボの名前が付いていますが、トンボとは類縁関係は薄く、ウスバカゲロウなどに近い昆虫です。お尻の先にクワガタムシの角のような付属器が付いていることから、これは♂です。

続く^^
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