新年度が始まると、本職の方が忙しくて、なかなか更新できません。なんとかこの間の観察会の写真を整理できましたので、やっと書き込みです (A^^;)
4月8日に龍門山の観察会に行ってきました。前回は山頂で思いがけなく吹雪に会ったり、季節の訪れが1~2週間遅いと感じたので、今回こそはもっといろんな花や昆虫と出会いたいと思っての観察会でした。でも、いつもなら麓から山頂部に咲くヤマザクラ(Prunus jamasakura)やタムシバ(Magnolia salicifolia)が見える時期なのに、全く咲いている気配すらありません。
当日は天気もとてもよく、観察会の参加者も30人ほども集まり、予定していた中央コースからではなく、田代コースを登ることにしました。予想通り花は少なく、登り始めてすぐにサイコクキツネヤナギ(Salix vulpina subsp. alopochroa)が咲いていた程度で、いつも必ず見られるシハイスミレ(Viola violacea var. violacea)も咲いていません。
雨が多かったので、登る途中にある塵無池(ちりなしいけ)を見に行ってみることにしました。

この池は流れ込む川もなく、雨の少ないときには干上がってしまう溜池ですが、この冬は雨が多かったため、水で満たされていました。池の中をのぞいてみると、水際に数え切れないくらいのカエルの卵。アカガエル類の卵かな?、という程度しかボクにはわかりませんでした。サンショウウオ類を期待していたのですが、残念ながらその姿を見ることはできませんでした。
ここから本道に戻る途中で、イヌガシ(Neolitsea aciculata)の花を参加者の方が見つけてくれました。本道でも幼木はたくさん見られましたが、開花しているものが見つからず、探していた花です。その後、本道沿いでも咲いている木を何本も見つけることができました。

カシの名前は付いても、これはクスノキ科の植物なので、特徴的な3行脈が目立ちます。春一番に茎に密着するように咲く赤い花は特徴的で、、葉だけ見るととてもよく似ていて6月ごろに長い花柄の先に黄色っぽい花をつけるヤブニッケイ(Cinnamomum tenuifolium)とは全く別物だということがよくわかります。ここでは両種が混生しているのですが、ヤブニッケイは香りがイヌガシよりずっと強いことや、平面的に葉を出すこともイヌガシとのちがいです。
ところどころでウグイスカグラ(Lonicera gracilipes var. glabra)もやっと咲き出していました。

もう少し咲き進めば、花冠の裂片が反り返るくらいまで開きます。
田代峠の上まで到着し、少し休憩してから、尾根筋を山頂に向いました。この途中で数頭ギフチョウ(Luehdorfia japonica)が飛ぶのを見ることができました。こんなに春が遅いと見られないのではと心配していたので、本当にほっとしました。
山頂に着き、昼食。食べ終わって、これまで見られた植物や鳥の説明をしている時、参加した子供さんがギフチョウを1頭捕まえて持ってきてくれました。

皆さんに見てもらったあと、そおっと地面に下ろしました。ギフチョウはまず♂が羽化し、送れて♀が羽化するので、今日見られたとしてもきっと♂だろうとの予測どおり、襟の黄色が薄い♂でした。本当に春の女神そのものです。
一度絶滅したあと、飼育個体を増殖させ、再び放してやっと見られるようになったギフチョウです。もといたこの南限の地のギフチョウとは遺伝的には異なるものになってしまいましたが、それでもこの場所でこれからずっと見られることを願うばかりです。
このあとは中央コースを下ります。この途中の道沿いに毎春に花を見事につけるイヌガシがありますが、名札製作の時にはいい写真を撮ってなかったため、名札が作れず残念なことをしました。
明神岩との分かれではアブラチャン(Lindera praecox)が満開になっていました。

一つ一つの花は小さいのですが、葉を展開する前に枝先に付ける花が木全体を黄色く染めて、とてもきれいです。
いつもなら明神岩からヤマザクラやタムシバの花を楽しめるのですが、今年は咲く気配すらなく、風景を楽しむだけに終わりました。

大切な龍門山のビユーポイントの一つなのに、岩登りのためにハーケンを打ち付けた跡がたくさん残っています。もろい蛇紋岩でできていることを考えれば、どれだけ危険なことかがわかるはずなのですが (A^^;)
続く^^