自宅から約30分くらいの山の中で、風の強い日にはカヤラン(Sarcochilus japonicus)の付いたスギ(Cryptomeria japonica)の小枝がたくさん落ちている場所があります。時々そこに行っては落ちてしまって枯れるばかりのカヤランを救出していますが、そこでは時々クモラン(Sarcochilus japonicus)も落ちているのを見つけることがあります。

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クモランはこの写真のように根っこだけしかないランで、スギなどの小枝に着生して根にある葉緑体で光合成をするという変わった植物です。といっても実は放射状に出している根っこの中心部に小さな茎を持っており、そこから根だけではなく、短くて細い花茎を出してミリ単位の花をつけ、思いのほか大き目の果実をつけます。この写真の下の方に淡褐色で枯れたようなものがくっついているのが、種を飛ばしたあとの果実です。

カヤランも夏の暑さと乾燥に弱くて、継続して育てるのはなかなか難しい植物ですが、クモランはさらに難しく、まずひと夏を越すことは不可能でした。これは生息地のような涼しくて空中湿度のある場所を提供することができないことがダメな原因だろうと、ほぼあきらめていたのですが、先日たくさんのクモランが落ちているのを見つけ、どうすればこれらのクモランを枯らすことなく育てることができるかを考えてみました。

空中湿度と適度な明るさや温度さえ維持できればもしかしたら継続して育て、開花させることもできるのではないかと考え、家にあった透明容器にミズクサを入れ、そこに入れて口を透明なラップで覆う、ということをやってみました。

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毎日霧吹きで水をかけ、室内の窓際においてみたところ、枯れることなく育ってくれることがわかりました。100均でちゃんと蓋のついた透明な容器を見つけたので、そちらにお引越しさせてみました。

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危険回避のために、二つに分けてお引越し^^ さてどうなりますやら、と毎日世話をしていたところ、

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新しい大きな根が伸びているのがわかるでしょうか? それだけでなく、細い花茎もそれぞれのクモランの中心部から伸びだしていました。とりあえずは成功のようです。

枝から落ちたときの衝撃のせいか、拾った段階で既に着生している枝からほとんど取れてしまっているものもありましたし、右から二つ目のクモランはスギの果実に着生しているような状態で、このまま何年も育てるのはちょっとたいへんそうです。とりあえずは夏をちゃんと越せるか、ですが、順調にいけば開花は十分期待できそうです。もしこの方法でうまく育ちそうでしたら、冬場の休眠期に慎重に枝からクモランを取り外したあと、もう少し幅の広い着生場所にお引越しさせることも可能ではないかと考えています。

うまく育ってくれることを祈ってます。