Nawshicaの自然とともに

2019年4月にフリーとなり、現在は Nature Guide & Research として鳥や植物、昆虫の調査や観察会講師、ガイドなどをしています。このブログは​ 20​10​/04​/2​9 に yahooブログで開設し、2019/09/09 にこちらに移行しました。このブログでは日々の活動で見た生き物を中心に情報を発信しています。

植物

7月末の稲村ヶ岳2

続きです。
 
山小屋も近くなり、前回ツツジ科のベニドウダン(Enkianthus cernuus f. rubens)を見つけたところの足元に、同じくツツジ科のアクシバ(Vaccinium japonicum)が咲いているのを見つけました。
 
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花弁の裂片がクルリと巻いているのがチャーミング! これで目の高さで咲いてくれればきっと誰もが気付くのに、背の低い草のような木本なので、なかなか気づいてもらえません (A^^;)
 
やっと山小屋に到着し、部屋の確認と荷物の整理をした後、付近の散策を行いました。見たかった花もなんとかまだ咲いていてくれてホッとしました(^^)v その近くには今年もシソ科のヤマトウバナ(Clinopodium multicaule)が咲いていました。
 
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ここのヤマトウバナはいつ見てもほんとに背が小さく、花のサイズは同じなのですが花序もこんなふうに小さくて花を少ししか付けません。屋久島と奈良県に隔離分布するヤマトウバナの変種、コケトウバナ(YListではヤクシマトウバナ)(Clinopodium multicaule var. yakusimense)ってのがあり、初めて見たときはこれに違いないと思ったのですが、ボクの和歌山の植物のお師匠さんに否定されてしまいました (A^^;)  奈良で記録されたものって、ほんとに屋久島で記録されたものと同じ変種なのか、実はかなり疑問に思っています (A^^;)
 
このすぐそばにはアカネ科のオオバノヨツバムグラ(Galium kamtschaticum var. acutifolium)も咲いていました。
 
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これもさっきのヤマトウバナと同じく小さい! でも、白い星形の花と長い毛で覆われた子房、4輪生する3本の脈が明瞭な丸い葉から、この種だとわかります。多雪地帯なのでこんなに小さいのかなあ??
 
夕飯に稲村ヶ岳山荘ご自慢の鍋をいただいたあと、夜はブラックライトに集まる虫の観察。残念ながら天気が下り坂で風が強く、小さな虫が少し集まった程度でした。昆虫編は植物編が終わってからのお楽しみにしてください^^
 
翌日は早朝から稲村ヶ岳山頂を目指しました。山小屋のそばにはオトギリソウ科のサワオトギリ(Hypericum pseudopetiolatum)が咲いていました。
 
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大峰山系ではごく普通に見られます。花が小さめで雄蕊の数が少なく、葉が楕円形で茎を抱かない、などが特徴です。
 
山頂までの途中、”無印”オトギリソウ(Hypericum erectum var. erectum  f. erectum)も咲いていました。
 
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こちらは花がサワオトギリより少し大きめで、雄蕊も多く、葉の基部側が最大幅となり、葉が茎を抱くのが特徴です。オトギリソウの仲間はけっこう同定がやっかいで、葉や萼片、花などにある黒線や黒点、明点などの有無や分布をしっかり見る必要があります。
 
キレットを超え、垂直の崖のところでは、バラ科のヤマブキショウマ(Aruncus dioicus)が満開でした。
 
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きれいだけど、よく似たのがユキノシタ科とかにもあって、いつも迷います (A^^;)
 
同じ場所には同じくバラ科のピンクの花、シモツケソウFilipendula multijuga)も咲いていました(入れたつもりなのにソウが抜けていました (A^^;)  指摘ありがとうございました)
 
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泡立つように咲くピンクの花はとてもきれいです。これと名前がよく似たやはりバラ科のシモツケ(Spiraea japonica)もここにあり、少し離れたところで名残の花が見られました。
 
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こちらは木本。花の色は似ていますが、雰囲気はかなり違います。
 
キレットあたりから普段でしたらムシクイ科のメボソムシクイ(Phylloscopus xanthodryas)の囀りが聞けるのですが、今年はなぜか全く囀っていない! もともと小さな個体群なので、ちょっと心配です。そのかわり今年はヒタキ科のコマドリ(Luscinia akahige)の囀りが何ヶ所かで聞くことができました。奈良県では近年個体数が激減している鳥。もっと復活してくれればいいのですが。
 
さて、やっと山頂です。続く^^

7月末の稲村ヶ岳

7月末に、18名+ボクを含めた付き添い2名の20名で稲村ヶ岳に行ってきました。今回は山頂付近の稲村ヶ岳山荘に宿泊する1泊2日の観察会です。
 
チャーターバスでエコミュージアムセンター前に到着し、身支度を整えてから予定通り10時ごろ登山に出発です。
 
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登山は初めての参加者もいるため、準備運動を行ない、登山中の注意などを説明した後、ゆっくりと登り始めました。天気も上々です。
 
歩き始めたあたりはずっとスギ(Cryptomeria japonica)の植林で、時々ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)が混ざります。スギとヒノキは有名でも実物で見分けられない人がほとんどなので、まずはその見分けから。針葉樹の植林の森は暗くて林床の植物も少ないことを実感してもらいました。
 
暗い林床にはアカバナ科のタニタデ(Circaea erubescens)やアカネ科のミヤマムグラ(Galium paradoxum)などが咲いていました。イラクサ科のウワバミソウ(Elatostema involucratum)も花をつけていましたが、こんな地味な花はあまり見向きもされません。
 
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これでも山菜としては人気とか。ボクはまだ食べたことがありません。よく似たヤマトキホコリ(Elatostema laetevirens)とは、葉の先が長く伸びること、開花期がヤマトキホコリは秋であることなどで区別できます。
 
これとは対照的に誰からも人気なのが、ユキノシタ科のギンバイソウ(Deinanthe bifida)です。とってもきれいに咲いていました。
 
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先が大きく二つに分かれた不思議な形の葉っぱですぐにそれとわかります。花も美しいのですが、上向きに咲けばもっと人気が出るのに、もったいない (A^^;)
 
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覗き上げるような窮屈な姿勢で、やっとのことで花の中を見ることができました。
 
これは草本ですが、さらに進むと同じように先が二つに分かれた葉を持つ木が見られます。こちらはアジサイ科のヤハズアジサイ(Hydrangea sikokiana)です。
 
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周辺に付く装飾花が小さくて数が少なく、高いところで花を咲かせるため、葉がユニークなのに花が咲いていてもなかなか気付いてもらえません。
 
今回はゆっくりと登ったので、法力峠でお昼ご飯。ここからがブナ林の始まりです。尾根筋を歩きながら、水場で小休憩。ここにはアカバナ科のケゴンアカバナ(Epilobium amurense)が咲いています。
 
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こうしてアップにすればきれいな花なのに、小さくてやはり見逃されることの多い植物です。
 
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柱頭が球形で、茎に稜があり、その稜上に白い毛が密に生えているのが特徴です。
 
小休憩のあと、山小屋に向って歩いて行きました。途中でユリ科のヤマジノホトトギス(Tricyrtis affinis)が咲いていました。
 
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登山道の横の斜面には、こんな光沢のあるぺらぺらっとした硬質のキノコが生えていました。
 
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キノコは守備範囲外ですので専門家に尋ねてみたところ、サルノコシカケ科のニッケイタケ(Coltricia cinnamomea)だそうです。傘の表面に同心円状の模様だけでなく放射状の繊維紋があるのが特徴だそうです。Rumi Yamadaさん、ありがとうございます。
 
続く。

7月初旬の稲村ヶ岳5

長かった稲村ヶ岳シリーズもこれで最後です。
 
レンゲ辻からの谷沿いのスリリングな道も終り、やっと舗装道路に出ました。ここから車を駐車している場所まではずっとこの舗装道路を歩かなければいけません。でも、この道筋もたくさんおもしろい植物が見られます。
 
歩き出してすぐ、こんな植物が花を咲かせていました。
 
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サンカクヅル(Vitis flexuosa)かアマヅル(Vitis saccharifera)のいずれかだと思って撮影。葉の鋸歯が三角形に尖っているのでサンカクヅルと思いましたが、花序は無毛。サンカクヅルには褐色の毛があるはずなのですが??
 
さらにその先では、ズイナ(Itea japonica)が満開でした。
 
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以前はユキノシタ科に分類されていましたが、APGⅢではズイナ科に分離されています。襲速紀(そはやき)要素の植物の代表選手。フォッサマグナから西、中央構造線より南に分布する遺存種のひとつです。側脈が葉の前方にカーブするのが特徴です。
 
その先ではサイゴククロヅル(Tripterygium regelii)も満開でした。
 
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つる性の植物で、これでもニシキギ科です。葉先が長く尖るのがクロヅルとの区別、とされていますが、YListでは区別されていません。連続する変異に関しては区別する必要がない、と言うボクのスタンスからいえば、クロヅルとするべきところです (A^^;)  う~ん、一貫性がない (A^^;)  これからは”サイゴク”は付けないようにしよう (A^^;)
 
道沿い、つまり林縁部にはつる植物が多い。これはマント群落といって森の中の湿度を保ったりする役割を担っています。そのつるの中にこんな小さな花が咲いているを見つけました^^
 
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マツブサ(Schisandra repanda)です。なかなか花には出会えないのでラッキーでした。
 
さらに歩いて行くと、道に突き出すようにカエデ類の大きな葉を見つけました。
 
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一見ウリハダカエデ(Acer rufinerve)のようにも見えますが、葉が長めで側裂片があまり横に広がらず、葉柄が赤いことから、ホソエカエデ(Acer capillipes)です。和佐又山の駐車場付近では大きな木が見られますし、この稲村ヶ岳の登山道で枝を拾ったこともありますが、この稲村ヶ岳でちゃんと生えているのを見たのは初めてです。なかなか見られない木です。
 
このあたりからナガバモミジイチゴ(Rubus palmatus var. palmatus)がたくさん実をつけていました。美味しい実で疲れを癒します^^ 同じような場所でエビガライチゴ(Rubus phoenicolasius)もありました。
 
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葉だけを見るとクロイチゴ(Rubus mesogaeus)に似ていますが、こちらは茎にも花序にも萼片の外側にも赤い毛がびっしりと生えています。花序を見れば”エビガラ”と付けた理由もうなづけます。
 
やっと山上ヶ岳の入り口駐車場までたどり着きました。ここのお店屋さんの向かい側で、ササユリ(Lilium japonicum)がとてもきれいに咲いていました。
 
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ここのは植栽なのかなあ?? まあ、ここならいくら咲いていても誰にも取られる心配はなさそうです。
 
トイレの横ではヤマボウシ(Cornus kousa subsp. kousa)が満開でした。
 
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さすがにこれは植栽だと思います。
 
ここからさらに歩いて車の場所に戻ったのは、もう6時半頃になっていました。なんとか明るいうちに戻って来れました^^
 
さて、明後日から再び稲村ヶ岳です。今回は稲村ヶ岳山荘で1泊し、鳥や植物の観察や実習を行います。またいいものが見られることを楽しみにしています^^

7月初旬の稲村ヶ岳4

いつまで続く稲村ヶ岳、って感じですが、お付き合いください (A^^;)
 
尾根筋を歩き出して少し歩いた頃、登山道から少し離れたところに白い花がたくさん咲いているのに気付きました。
 
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カラマツソウ(Thalictrum aquilegiifolium)です。遠目にはヒメジョオン(Erigeron annuus)がいっぱい咲いてるように見えました。この白い花は花弁じゃなくて花糸、つまり雄しべです。カラマツソウは雄しべの先の葯より雄しべの軸の部分の方が幅が広いことが特徴です。
 
登山道に戻ると、コケの中になにか突き出しているものに気が付きました。
 
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冬虫夏草だと思い根元を掘ってみたのですが、最初の個体はなにから出ているのかはわかりませんでした。その後再び見つけた個体の根元をゆっくり掘ってみると、
 
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ありました! ガの仲間のサナギです。やはり冬虫夏草にまちがいありません。サナギのところどころから白い菌糸が見えています。帰ってから調べてみると、サナギタケ(Cordyceps militaris)だとわかりました。
 
この道の先は女人禁制の山上ヶ岳に続きます。その分岐点になるレンゲ辻には女人禁制門があり、そこには大きな立て看板が設置されています。
 
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かなり以前からこの英文の最初の単語がこのように消されています^^
 
ここからは谷を下る道。バイケイソウ(Veratrum album subsp. oxysepalum)がたくさん咲いていました。
 
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アップで見るとなかなかきれいです。
 
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かつてはユリ科に分類されていましたが、今はシュロソウ科に分類されています。
 
谷を下る途中、少し離れたところにバイカウツギ(Philadelphus satsumi)が咲いていました。
 
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望遠レンズで撮影。アブラムシがいっぱい付いていてちょっとかわいそうです (A^^;)
 
さらに下ると足元にたくさんの芽生えが出ていました。
 
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この葉を見て成木がなにか分かる人はすごい! この谷にたくさんある巨木、シオジ(Fraxinus platypoda)の芽生えです。
 
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これは幼木。後ろに写っている幹でもまだ子供です。この谷には一抱え以上もあるような巨木がたくさん生えています。あの双葉からこんな羽状複葉になるなんて、まず想像がつきません。
 
次がこのシリーズ最終回です^^

7月初旬の稲村ヶ岳3

稲村ヶ岳、まだまだ続きます。
 
コミネカエデ(Acer micranthum)の咲いていたすぐ横に、ベニドウダン(Enkianthus cernuus f. rubens)も咲いていました。
 
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「ベニ」といってもうっすら赤い程度。シロドウダン(Enkianthus cernuus f. cernuus)に近いものまでいろいろ見られますが、和佐又山に植栽されているような真っ赤なものは野生では見たことがありません。花冠の先が細かく三角に裂けたようになっているのが特徴です。
 
苔むした大木の幹には、アオベンケイ(Hylotelephium viride)が着生していました。
 
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蕾がついています。残念ながらいまだにちょうど花の咲く時期にはめぐり会えていません。来週には花が見られるでしょうか?
 
やっと山頂の稲村ヶ岳山荘に到着。少し遅くなりましたが、ここでお昼ご飯。木製のベンチは乾いていてゆっくり座ってご飯です。そのベンチとテーブルの上には、我々よりも先にこんな虫が休憩中でした。
 
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地味なジョウカイボンの仲間の中では美麗種のひとつ、アオジョウカイ(Themus cyanipennis)です。こんなにきれいでも、成虫も幼虫も肉食性です。
 
これ以外にも、ハナカミキリ類やツツハムシ類なども休憩中でしたが、小さいし止まってくれずにいい写真はなかなか撮れませんでした。この子はまだゆっくりと撮らせてくれた方です。
 
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ビロウドコガネの仲間だというのはすぐわかりましたが、種名まではわかりませんでした。帰って調べてみたところ、黒っぽくて毛深いこと、触角の柄の部分が黒くなくて先の開いた部分の半分くらいしかないことから、ハイイロビロウドコガネ(Genus Pachyserica)♂のようでした。
 
山荘のトイレ横では、ヒナノウスツボ(Scrophularia duplicatoserrata)が咲いていました。
 
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現地では花が密集してるように思い、オオヒナノウスツボ(Scrophularia kakudensis)と言ってしまいましたが、まだ花序が伸びかけだったようです。葉の鋸歯も細かそうに思ったのですが (A^^;)  オオヒナノウスツボの花期は8~9月ですし、もっとがっしりとした感じで、葉の基部が心形になるものもあるようです。
 
いよいよ稲村ヶ岳山頂へ。途中、イワカガミ(Schizocodon soldanelloides var. soldanelloides)の残り花を見ながら、オオミネコザクラ(Primula reinii)のある岸壁のところに着きました。ここにはハナヒリノキ(Eubotryoides grayana)があります。
 
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地味で小さな花をつけるツツジ科の植物。ここには葉裏が白いウラジロハナヒリノキ(Eubotryoides grayana var. hypoleuca)も見ることができます。
 
稲村ヶ岳に初めて登った30年程前には、登山道沿いの両側にオオヤマレンゲ(Magnolia sieboldii subsp. japonica)がたくさん見られたのですが、ニホンジカ(Cervus nippon)の食害で今は全く見られなくなりました。たまにまだ小さな幼木を見ることがあることから、開花株もまだ残っているのだろうなと思いながら、今まで見つけることができませんでした。ところが・・・
 
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岸壁を越えたところの谷の向かい側に開花株を発見! とても立派な株です。今回もショウキラン(Yoania japonica)などを真っ先に見つけてくれた参加者の方が気付いて教えてくれました。
 
このあたりから天候が怪しくなり、山頂はあきらめて引き返すことに。カッコウ(Cuculus canorus)やルリビタキ(Tarsiger cyanurus)の囀りを聞きながら、稲村ヶ岳山荘まで戻り、そこから山上ヶ岳方向に向いました。
 
曇り空で少し雨のぱらつくこともあり、鳥の囀りや昆虫はほんとに少ししか見ることができませんでしたが、ルリセンチコガネ(Phelotrupes auratus auratus)はいつものように見ることができました。きらめきながら飛んでいたのを手で叩き落として撮影。
 
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暗いし動き回るのでピントが (A^^;)  こんなにきれいなのに、食べているものは・・・ う~ん不思議だ^^
 
もうひとつ、こちらもここではいつもで会える生き物、ナガレヒキガエル(Bufo torrenticola)もいました。
 
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グロテスクですが、意外とカラフル。渓流性のヒキガエルです。紀伊半島のみかと思っていたら、意外と広く分布するみたいです。
 
さらに続く^^
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