Nawshicaの自然とともに

2019年4月にフリーとなり、現在は Nature Guide & Research として鳥や植物、昆虫の調査や観察会講師、ガイドなどをしています。このブログは​ 20​10​/04​/2​9 に yahooブログで開設し、2019/09/09 にこちらに移行し、日々の活動で見た生き物を中心に情報を発信しています。なお、元高校数学の教師でしたので、家庭教師の依頼も受けております。

植物

弥山(奈良県)の植物1

やっと仕事もひと段落^^
 
さてさて、溜まっていた写真もどれから手をつけようかと考えましたが、弥山の昆虫編のあとはやっぱり弥山の植物です^^
 
弥山登り口になっている行者還りトンネル付近は、平日なのに車でいっぱい (A^^;)  スペースを見つけて駐車して、山登り用に服を調えたあと、9時40分頃山頂に出発。
 
登り口のあたりにはコウツギ(Deutzia floribunda)が満開でした。
 
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この写真は、帰りに登り口まで降りたあと、着替えてから付近を散策していた時に撮ったものですが、手前の大きい花が無印^^ウツギ(Deutzia crenata) 奥の小さい花がコウツギです。こんなに花のサイズがちがうのは遠近法のせいではありません (A^^;)  下界ではウツギはもう1ヶ月以上前に花が終わっているのに、ここではまだ咲いているのがありました。しかもボクに撮ってくれと言わんばかりにコウツギと並んで咲いてるなんて^^
 
コウツギやウツギは、エングラー分類ではユキノシタ科ですが、最新のAPGⅢによるとクロンキストの提案したようにアジサイ科に分離されています。
 
登り口からはだらだらときつい登りが続きます。花も少なく、休憩しつつ尾根に着いたのが10時半頃。10分ほど休憩してから尾根筋を弥山に向いました。天気がよく、出合分岐付近からは絶景が見られました^^
 
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遠くかすかに稲村ヶ岳と大日岳が見えています。
 
尾根筋には本当に植物が少ない! 咲いているものといえば、ナガエコナスビ(Lysimachia japonica)くらいでした。
 
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コナスビはかつてはサクラソウ科に分類されていましたが、APGⅢではヤブコウジ科に移されました。
 
バイケイソウ(Veratrum album subsp. oxysepalum)は満開をわずかに過ぎた株が大半でしたが、中にはこんなにきれいに咲いているものもありました。
 
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バイケイソウは、APGⅢではユリ科からシュロソウ科に分離されました。う~ん、本当に覚えられない (A^^;)
 
花の中をのぞいていろいろな昆虫を撮影しながら、さらに尾根を進むと、最後にまた長い登りです (A^^;)  そろそろ気になる植物が咲いているはずなのですが、残念ながらまだ花茎を延ばしだしたところでした (A^^;)
 
このあたりから、メボソムシクイ(Phylloscopus xanthodryas)やルリビタキ(Tarsiger cyanurus)などの囀りがたくさん聞こえてきました。メボソムシクイは、昨年ここで聞いた囀りは標準タイプの4拍(チョリチョチョ チョリチョチョ ・・・)ではなく、5拍(チョチョリチョチョ チョチョリチョチョ ・・・)だったのでびっくりしたのですが、今年は5拍で囀る個体はごくわずかで、大半は大峰山系でよく聞かれる3拍(チョチョチョ チョチョチョ ・・・)、1個体だけ標準タイプの4拍囀りをするものもいました。
 
山頂に近づくと、もうとっくに終わっていると思っていた花がまだ咲いていました。
まずはミヤマムグラ(Galium paradoxum subsp. franchetianum)。
 
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ここより低い大普賢では、もうとっくに花が終わって種になっていたのに、ここではまだ咲いていました。
 
タニギキョウ(Peracarpa carnosa)もまだ花が見られました。
 
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暗い森の中に咲く白い花は、本当に撮影が難しい (A^^;)
 
弥山山頂には12時40分頃到着。お弁当と、こっそり持ってきた冷えたビールで一人乾杯です^^
 
紀伊半島最高峰の八経ヶ岳は目の前にあります。
 
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食事が終ってから、まずは弥山小屋付近を散策。
 
山頂の天河大辨財天社付近でカラマツソウ(Thalictrum aquilegiifolium var. intermedium)が咲いていました。
 
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花弁はなく、包んでいた萼片も開花後すぐ落ちてしまい、花のように見えるのは雄しべで、雄しべの軸(花糸)が花弁のように平たくなり、先の葯より広くなるのが特徴です。
 
こんなスゲも咲いていました。
 
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ミノボロスゲ(Carex nubigena subsp. albata)です。花序の付け根に細い葉のような苞があること、披針形の花を密集してつけ、雌鱗片が果苞より短くて中軸の両側が褐色であることなどが特徴です。スゲはもっと勉強しなくては (A^^;)
 
そろそろ八経ヶ岳に出発です^^ 続く

マムシグサ(テンナンショウ)の仲間

この6月はほんとに忙しくて、全然更新できませんでした (A^^;)
 
稲村ヶ岳も、大普賢も、観察会もいろいろ行ってるのに、帰宅すると爆睡 (A^^;)  困ったものです。
 
久しぶりに更新する内容は、マムシグサ(テンナンショウ)の仲間。食虫植物か、それこそマムシが鎌首を上げたような花なので、登山道沿いに咲いている花がぽきぽき折られたりすることもしばしばです。じっくり見るととっても興味深いのになあ (A^^;)
 
では最初は和泉山脈でも和歌山や奈良でも一番普通に見られるムロウテンナンショウ(Arisaema yamatense
 
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花のように見えるのは実は花ではなくて、苞(仏炎苞)と呼ばれるもので、この内部に直立した茎のようなものがあり、その基部に多数の小さな花が付いています。この直立した茎のようなものの先端部分を付属体と言い、この形も識別点として重要です。
 
さて、ムロウテンナンショウは小葉がたくさん付き、ふちには細かな鋸歯があり、仏炎苞の先は長く伸びずに三角形になっています。中をめくってみると、
 
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付属体は先細りで、先端が丸く膨れています。仏炎苞の内側は白い細かな顆粒状の乳状突起が密生しているため、白っぽく粉をふいたように見えるのが他の種にはない特徴です。
 
ムロウテンナンショウと同じくらい普通に見られるのがムロウマムシグサ(Arisaema kishidae
 
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名前はそっくりですが、小葉はもっと丸みを帯びていて数が少なく、仏炎苞の先が長く伸びることが特徴です。また、仏炎苞の内側には乳状突起がなく、付属体は棍棒状で先まで太いことも特徴です。別名キシダマムシグサ。と言うかYListではこっちが採用されています。
 
次は大峰山系で時々見かける種類。ボクはこれはコウライテンナンショウ(Arisaema peninsula)だと思っていますが、もしちがっていたら指摘お願いします。
 
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葉は2枚あり、小葉は幅が広くて全縁。仏炎苞の先は少し伸びる程度。内部は、
 
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仏炎苞の内部に乳状突起はなく、つるっとして光沢があります。付属体は先端まで太いままです。ヒロハテンナンショウ(Arisaema ovale var. sadoense)ではないかと最初思ったのですが、ヒロハの葉は一つなのでちがうようです。
 
次も大峰山系や大台ケ原で時々見る種類。オオミネテンナンショウ(Arisaema nikoense subsp. australe)です。
 
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紫色をした仏炎苞が特徴的で、葉が展開する前に花を付けることも他のマムシグサ類とは異なります。標高の高いところにだけ見られること、葉の幅が広くて鋭い鋸歯があることなども特徴です。
 
こちらも花の内部を見ると、
 
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光沢のある濃い紫色の仏炎苞の内部と、先まで太いままの斑点のある付属体が特徴的です。
 
最後は去年初めて出会えたレアもの、ホロテンナンショウ(Arisaema cucullatum
 
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今年は去年と別個体、それもすごく立派なのを見ることができました。これは他と見間違うことのない独特の仏炎苞をしています。
 
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仏炎苞の縁が中に巻き込むようになっている本種の特徴がよくわかります。付属体の先は細くならずに棒状です。
 
マムシグサの仲間は、地下茎が大きくなると性転換して雌株になる変わった性質を持っています。このホロテンナンショウも、このサイズだとおそらく雌株ではないかと思われます。

大普賢2

山頂に到着する直前、日陰になったところに雪が残っていました。5月1日に降った雪がまだ残っていたようです。山頂近くの気温はわずかに4度。あられも時々降り、風が冷たい。でも、山頂に到着し、お昼ご飯を広げる時には、風もやみ日差しもわずかに出て、暖かい中で食事をすることができました。
 
山頂ではマンサク(Hamamelis japonica)が咲いていました。
 
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花はほとんど終わりかけで、これがまだ一番新鮮な花です。細長くて縮れた4枚の花弁と、基部にある4枚の萼がなんともいえず不思議な感じで、花弁が落ちて新芽が展開するまでの間に見た時は、残っていた萼片だけではいったい何の仲間かすぐにはわかりませんでした (A^^;)
 
小普賢から大普賢山頂までの間では、ヒメイチゲ(Anemone debilis)もよく見られました。
 
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これは山頂のもの。これが一番開いていて、天気があまりよくなかったせいか、あとはどこのを見ても左の個体のように花が閉じたままでした。
 
山頂から反対側に降り、ぐるっと回ってまた同じ山頂直下に戻り、そこから下山開始。帰りは笙の窟から南に下り、少し遠回りして和佐又のコルまで戻りました。
 
この山ではところどころでヤシャビシャク(Ribes ambiguum)が見られます。
 
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ヤシャビシャクは着生植物で、日本産のスグリの仲間です。こんな感じに、ブナ(Fagus crenata)やミズナラ(Quercus crispula)の幹の苔むしたところに着生するのが普通なのですが、
 
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こんなつるつるの肌のヒメシャラ(Stewartia monadelpha)にまで着いているのにはびっくりしました。寄生しているわけではなく、あくまで木に積もったコケや落ち葉の層に根を張る着生植物ですので、木に迷惑をかけることはありません。
 
最初の写真の株は、右端の方に花が見えます。
 
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これは別の時に撮った花のアップ。以前はユキノシタ科に入れられていましたが、今はスグリ科に分離されました。スグリに似た美味しそうな実をつけますが、緑色のまま熟します。この花の基部に見えるように実にも長い毛がいっぱい生えているので、それを夜叉が髪を振り乱した姿に見立てた名前のようです。
 
下っていく途中でヤマシャクヤクがありました。
 
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あと数日で咲きそうです。この数日の寒気さえなければちょうど花の時期だったのに、残念です。雪で葉が痛んだ個体もたくさんありました。
 
歩いている山道の足元に、小さな花を見つけました。
 
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実物は本当に小さい。緑の5枚の花弁のように見えるのは萼で、その間から細くて白い糸のように出ているのが退化した花弁です。花弁が全くないものがアオハコベ(Stellaria uchiyamana var. apetala)ですので、厳密に言えばこれは母種のヤマハコベ(Stellaria uchiyamana)との中間タイプ。でも、さすがにこの程度ならアオハコベと言ってもいいと思います。萼の外側や葉には2叉した白い毛が密生しています。
 
あと数週間もすればもっとたくさんの花に出会えたと思います。またリベンジです^^

大普賢

ゴールデンウィークはいろいろと行事が多く、残念ながら山にはどこにも行けないとあきらめていました。でも、5月4日の予定が偶然なくなり、急遽大峰山系の大普賢に登ることにしました。
 
和佐又山登山口から登り始めてすぐ、オオイタヤメイゲツ(Acer shirasawanum)が咲き出していました。
 
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葉柄や花序が無毛で、赤い萼に白い花弁がかわいい花です。
 
クロモジ(Lindera umbellata)も満開でした。
 
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ヒメクロモジ(Lindera lancea)に比べて花数がとても多く、花序に白い毛があります。
 
足元には白いスミレが咲いています。トウカイスミレ(Viola tokaiensis)です。
 
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側花弁にほとんど毛がなく、柱頭は棒状であまり膨らみません。
 
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萼の付属体が後ろに大きく発達して張り出しているのも特徴です。大普賢の標高の高いところにあるのは気付いていましたが、和佐又山の登り口にもあるのは気付いていませんでした。
 
和佐又のコルを越えて登山道沿いにはナガバノタチツボスミレ(Viola ovato-oblonga)やシハイスミレ(Viola violacea var. violacea)がたくさん咲いていましたが、それ以外の花はあまり見られませんでした。
 
朝日窟などの岩場付近で、やっとネコノメソウの仲間が咲いていました。
 
まずはヨゴレネコノメ(Chrysosplenium macrostemon var. atrandrum)と思われる花。
 
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萼片が直立し、紫色の葯と黄色い葉とのコントラストがなかなかかわいい。雄しべは6本あるように見えます。
 
タチネコノメソウ(Chrysosplenium tosaense)も咲いていました。
 
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こちらは萼片が平開気味で、雄しべが8本あり、葯は黄色です。全体に小さくて柔らかい感じがします。
 
ワチガイソウ(Pseudostellaria heterantha)も咲いていました。
 
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黒い葯が白い花にアクセントをつけてとてもかわいいのですが、すぐ葯は落ちてしまうのが残念。
 
このあとがんばって山頂を目指しましたが、曇り空からポツポツとあられが降ってきます。寒い! 5月1日には積雪もあったようで、山頂の気温は4度でした (A^^;)
 
続く。

龍門山リベンジ観察会その3

明神岩から下山する途中で、ミヤマシキミ(Skimmia japonica var. japonica)が咲いていました。
 
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これは雄花。雄しべは完全で、雌しべの柱頭がありません。花は密についています。
 
続いて雌花。
 
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雄しべの葯は見当たらず、雌しべの柱頭がはっきりわかります。花数も少なくてまばらです。
 
さらに下ると、山道にこんなものがいっぱい落ちていました。
 
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中央コースで唯一あるイヌシデ(Carpinus tschonoskii)の雄花です。
 
龍門山は不思議な山で、ごく普通種のこのイヌシデやアカシデ(Carpinus laxiflora)、アラカシ(Cyclobalanopsis glauca)などがほとんど見られません。龍門山の山頂部付近が蛇紋岩でできているため、それが風化してできる超塩基性の土質が影響しているのではないかと思います。この大きなイヌシデのある近くには、大きなウラジロガシ(Quercus salicina)もありますが、これもほぼここにしか見られません。
 
この少し降りたところには、ヤマネコノメソウ(Chrysosplenium japonicum)が咲いていました。
 
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黄色い花の間に、鉄アレイ型の果実が見えます。もうそろそろ花の時期は終わりです。茎に付く葉が互生していることが特徴です。
 
さらに下ったところで、シハイスミレ(Viola violacea var. violacea)をパチリ。
 
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ボクの大好きなスミレ。やっぱり毎年撮ってしまいます^^ う~ん、実物はもっと赤紫色の花なんだけどなあ (A^^;)
 
中央道の登り口近くには、ムラサキケマン(Corydalis incisa)が咲いていました。
 
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クサイチゴ(Rubus hirsutus)も満開でした。
 
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これが実ったら美味しいし、どのキイチゴよりもたくさん食べられるのがうれしい。味はナガバモミジイチゴ(Rubus palmatus var. palmatus)についで美味しいです。
 
登山道入り口を出て車を置いた場所まで歩いて戻る道筋には、ニガイチゴ(Rubus microphyllus)も咲いていました。
 
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ナガバモミジイチゴは下向きに咲いて撮りにくいけど、こちらは上向きに咲くので簡単に撮影できます。名前のように、果実の味は・・・
 
さらに歩いている途中で、受験生のお守り、ヤマコウバシ(Lindera glauca)の花をみつけました。
 
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今までなかなか花の時期にめぐり会わず、今回やっと撮影できました。これは雌花。不思議なことに日本で見られるのは全て雌株で、雄株は発見されていません。それでもちゃんと果実ができて増えている。雄は必要ないんですね (A^^;)
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