Nawshicaの自然とともに

2019年4月にフリーとなり、現在は Nature Guide & Research として鳥や植物、昆虫の調査や観察会講師、ガイドなどをしています。このブログは​ 20​10​/04​/2​9 に yahooブログで開設し、2019/09/09 にこちらに移行しました。このブログでは日々の活動で見た生き物を中心に情報を発信しています。

昆虫

春のバンディング(昆虫編)

鳥が最終日はすごく低調だったのと反対に、昆虫は最終日にたくさん見ることができました。

まずはヒシカミキリ(Microlera ptinoides

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この網の目は捕虫網の網の目。ということから、いったいどれだけ小さなカミキリムシかがわかるのでは。ちょうどマルバアオダモ(Fraxinus sieboldiana)が満開で、その花に捕虫網をかぶせてゆすってみたら網に入りました。あまりの小ささに、その場ではカミキリムシだと即答できず、カッコウムシの仲間の可能性も考えました。

同じくゆすった網に入ったのはモモブトカミキリモドキ(Oedemeronia lucidicollis)♀

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これは♀なので腿は太くありませんが、♂はポコンと腿が膨れます。春一番にタンポポの上なんかでよく見る昆虫です。

サルトリイバラ(Smilax china)の葉の上で、フタホシオオノミハムシ(Pseudodera xanthospila)も見つけました。

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ぱっと見はウリハムシ(Aulacophora femoralis)かなって感じですが、上翅の後ろ側面に白い紋があります。

ウリハダカエデ(Acer rufinerve)の葉の上には、ドロハマキチョッキリ(Byctiscus puberulus)♂がいました。

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暗くて証拠写真程度にしかならなくてがっかり (A^^;)  せっかくの美麗種なのにほんとに残念です (T_T)  前胸両側に小さな棘があるのが♂の特徴です。ウリハダカエデを細く筒状に巻いた揺籃もあったのに、それを撮影することも忘れていました (A^^;)  捕獲した鳥を持った帰りだったので、落ち着いて撮影できなかったのが悔やまれます。

甲虫はここまで。次はヒメハサミツノカメムシ(Acanthosoma forficula)♀

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カメムシは臭いのでちょっと苦手ですが、このカメムシは緑にキラキラ輝いてとてもきれいです。♂はお尻の所に名前どおりのハサミムシを思わせる尾状突起があります。

最後はエゾハサミムシ(Eparchus yezoensis

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シャープなスタイルがとてもかっこいいハサミムシです。

去年見た昆虫たち

鳥ネタばかりが続きましたので、今度は溜まってた去年の写真から、去年見た昆虫を^^ ”鳥の”っていつも言われるのですが、もともとは昆虫少年だったのです^^

まずは5月に大阪南部の岬町で観察会をしたときの写真から。この観察会は一応鳥の観察会ですが、ボクは鳥に限らずいつも植物や昆虫なども説明するようにしています。この日はいろいろな昆虫が見られました。

登山道の途中でシジミチョウがいました。おや? っと思って止まったのをよく見ると、サツマシジミ(Udara albocaerulea)♂でした。

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南方系のチョウで、大阪市内でも既に記録されているので、いるとは思っていたのですが、ボクにとっては初見のチョウ。羽根を広げたところをやっと撮ることができました。とても美しい!

甲虫でも初見のものがありました。最初は普通種のベニカミキリ(Purpuricenus temminckii)と思っていたのですが、何かちがう雰囲気なので帰って調べてみると、ヘリグロベニカミキリ(Purpuricenus spectabilis)でした。

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ベニカミキリそっくりですが、後翅にある黒い紋や前胸の黒い縁取りが特徴的です。普通種のベニカミキリもいましたので比較してみてください。

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ほんとにそっくりです!

山道の最奥ではトラフトンボ(Epitheca marginata)♂もいました。

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いくら水辺が近いとはいえ、岬町の、しかも山奥の山道で飛んでいるのには驚きでした。もちろんこの観察会では初めての記録です。

次は7月にやはり大阪南部で見つけたキンイロネクイハムシ(Donacia japana

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まるで宝石のような美しい甲虫です。

この甲虫は水草のミクリ類のみを食べ、ミクリ類自体がたいへん少ない水草であるために、キンイロネクイハムシも生息地が限られており、環境省の準絶滅危惧種に指定されています。大阪府野生生物目録に大阪南部の記録はありませんでしたが、大阪南部で一ヶ所ヤマトミクリ(Sparganium fallax)のある池を知っていて、きっとそこにいるに違いないと考えて見に行ったところ、予想通り見つけることができました。もちろん初見の甲虫です。

ヤマトミクリはこちら。

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クリのイガのような不思議な実をつけます。この植物も環境省の準絶滅危惧種です。

次は8月の恒例の鳥のバンディングの合間に見た昆虫。山頂で見つけたミヤマアカネ(Sympetrum pedemontanum elatum)です。

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大阪府野生生物目録には泉南地域の記録がありますが、ボクはこの調査地で見るのはもちろん、大阪南部で見るのも初めてでした。

最後はやはり大阪南部の淡輪で見たキンケハラナガツチバチ(Campsomeris prismatica

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こちらは♂。これも大阪府野生生物目録に大阪南部の記録が抜けていますが、秋にはたくさん見られます。

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花に来る♂はたくさん見るのですが、♀は見たことがありませんでした。今回初めて♀を見つけました。

暖かくなったらまたいろんな昆虫たちに出会いたいものです^^

タイと台湾のチョウ、その他

さらに続きです。

東南アジアに行ってよく見る美麗チョウにアゲハチョウ科のルリモンアゲハ(Papilio paris)があります。日本のカラスアゲハ類に青い紋をつけたような美しいチョウです。

まずはタイ産。

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青い大きな紋と、エメラルドグリーンの点でちりばめられた黒い翼が魅力的です。これは1980年8月8にタイ Doi Suthep で捕ったもの。

この仲間は台湾にもいて、台湾産は Papilio paris hermosanus という亜種になるようです。

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これは1980年8月20日に台湾の巴陵で捕ったものです。同じルリモンアゲハでも、青い紋の形や前翅の緑のラインの有無、羽の形、エメラルドグリーンの点の分布などが違っています。

こう書いた後、親しい鳥友の方からメールをいただき、調べてみたところ巴陵は台湾の台北よりももっと北部で、分布域を考えてもご指摘のとおり台湾北部のもう一つの亜種 nakaharai、オオルリモンアゲハのようです。ご指摘本当にありがとうございました^^

台湾ではもう一つ、同じアゲハチョウ科のタイワンタイマイ(Graphium cloanthus)も展翅していました。

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こちらも1980年8月20日に台湾の巴陵で捕ったものです。日本のアオスジアゲハ(Graphium sarpedon)よりもずっと水色の面積が広くて美しいチョウです。

日本のチョウもほんの少しだけ展翅していました。まずはアゲハチョウ科のナガサキアゲハ(Papilio memnon Linnaeus)♀

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ナガサキアゲハには有尾型と無尾型があり、本州で見られるのはほとんどがこの無尾型です。名前のとおり南方系のチョウで、このときより前には見ることのないチョウでした。1990年7月13日に初めて我が家の庭に飛来して驚きました。これがそのときのチョウで、これ以来チョコチョコ見かけるようになり、今ではごく普通に見ることができるようになりました。

もう一つ、同じく南方系のチョウでかつては全く見られなかったチョウが、このタテハチョウ科のイシガケチョウ(Cyrestis thyodamas)です。

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1990年7月9日職場からの帰りに紀の川市神通付近を車で走っているとき、白いチョウが飛んでいるのを見つけ、あれっと思って車を止めたところ、イシガケチョウだったので驚きました。これもこの地域で見るのは初めてで、見ているうちに近くの葉の裏に張り付くように止まったので、上から叩き落として採集したものです。おそらくこの頃に温暖化による昆虫類の分布域の北上が顕著になってきたのかもしれません。

同じように温暖化で分布域が北上してきたものはいくつもあり、このシジミチョウ科のヤクシマルリシジミ(Acytolepis puspa)もその一つです。

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2005年11月12日に紀の川河川敷で見つけました。その前年くらいに大阪南部で見られたと聞いていたので注意していたので、すぐ気付きました。これは♀で、これがここでの初認です。

もう一つ、これも標本ではありませんが、今ではどの池でもごく普通に見られるようになったのがサナエトンボ科のタイワンウチワヤンマ(Ictinogomphus pertinax)です。

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これに似て一回り大きなウチワヤンマ(Sinictinogomphus clavatus)は、ごく限られた場所しか見ることができません。

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こちらは昔から見られたトンボで、身体ががっしりとしており、腹部先端の”ウチワ”が大きくて黄色い紋が入っていることが特徴です。

あ、標本でした (A^^;)  もう一つ、雑甲虫で、おそらく今は大阪南部からは消滅したと思われるものが、ひどい状態ですが何とかそれとわかる状態で残っていました。

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これはオオサカヒラタシデムシ(Eusilpha jakowlewi similator)。1969年10月29日大阪南部にある樫井川河川敷で採集したものです。上翅に紋があるように見えるのは、腹部が虫に食われて透けて見えているだけです。当時は普通にいましたが、今は全く見ることができません。

夏の標本同定会に大阪市立自然科学博物館(現 大阪市立自然史博物館)に持って行って、「ツシマヒラタシデムシだよ」って言われて、どうして対馬にしかいない虫が? って不思議に思ったことを覚えています。現在はこのツシマヒラタシデムシの大阪産亜種ってことになっています。淀川などではまだちゃんと見られるようですが、大阪南部ではもう絶滅してるかも。

標本シリーズはとりあえず終了です^^

タイと台湾のチョウ

次は植物編、と言ったものの、その前にまた昆虫です (A^^;)

元雑甲虫少年だったこともあり、昆虫は大好き^^ でも、中学生くらい以降は採集するのはよほどのことがない限り国内では小さなハムシダマシやチビタマムシのような雑甲虫ばかり。チョウの採集などはまずしませんでした。ただ、海外では別。これまで図鑑でしか見たことのなかったチョウが目の前に飛んでいたら、ついネットを取り出して採集していました。と言っても、同じ種類をとことん捕りまくるような一部のマニアみたいなことは決してしません。きれいな♂♀が捕れればそれで十分満足^^

海外には2度、一度は大学2回生の夏に台湾を1周、その次は就職してからやはり夏にタイ北部、スリランカ中南部、台湾北部を回ってきました。

そのときの標本はいまだに三角紙に包まれたままですが、一部は展翅をして標本箱に入れていました。

事情があってその標本箱を何年も触ることがなく、先日久しぶりにその標本箱を見てびっくり! 虫に食われてたいへんな状態になっていました。幸い海外で捕ったチョウの標本はまだなんとか無事でしたので、今のうちに撮影することにしました。

まずはなんといってもアゲハチョウ科の美麗種、キシタアゲハ(Troides aeacus

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これは♂ 初めてネットインしたときには、あまりの大きさと力強さに手が震えました。

続いて♀

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後翅の模様が全く違いますし、サイズも大きい。この2頭はいずれも1980年8月8日にタイ Doi Suthep で採集したもの。今はキシタアゲハやトリバネアゲハの仲間は全種がワシントン条約対象種となっています。

同じ日、こんなチョウも採集しています。一つ目はシロチョウ科のアカリスカザリシロチョウ(Delias acalis

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美しいシロチョウです。台湾で見たアカネシロチョウ(Delias pasithoe curasena)にとてもよく似ていますが、羽の裏側の模様は全く違います。

続いてタテハチョウ科のビブリスハレギチョウ(Cethosia biblis

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ハレギチョウの仲間はなんとなくシロチョウ科だと思い込んでいましたが、タテハチョウ科、それもドクチョウ亜科ホソチョウ族に分類されています。そう言われてみれば確かにタテハチョウに見えてくるのが不思議^^

アカリスカザリシロチョウに似たこのチョウも展翅していました。ワイルマンシロチョウ(Delias wilemani

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これは1977年7月10日に台湾阿里山で採集したものです。この日はちょうどこれにそっくりなシロチョウ科のタカムクシロチョウ(Metaporia leucodice illumina)が大発生していて、2~3頭きれいなのを捕ったあとは適当にネットインしては逃がし、ってのを繰り返していただけでしたが、これをネットインしたとき、何かが違うって思い、三角紙にキープ。宿に帰ってから調べてワイルマンシロチョウだとわかり小躍りしました。このとき一緒に行ったチョウ目的の同級生2名はどちらも結局最後まで捕ることができず、とっても悔しがっていました。4人で行った残り一人はクモ専門でした (A^^;)  ボクは一番苦手ですが、手づかみして採集しているのには驚き (A^^;)

この年は、夏休みの大部分を使って、台湾を1周しました。これこそ熱帯のチョウで、図鑑でしか見たことのなかったタテハチョウ科のコノハチョウ(Kallima inachus)も採集することができました。

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これも憧れのチョウでした^^

続く^^

信州の昆虫(チョウ編3その他)

チョウ編もこれが最後です。

2日目に行ったところで、見たかった2種類のチョウを見ることができました。

まず一つ目はシジミチョウ科のミヤマシジミ(Lycaeides argyrognomom

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これは♂ 前回のヒメシジミ(Plebejus argus)ととてもよく似ていますが、青い表面の縁取りの太さや、この写真では見えていませんが、後翅裏面の縁にある黒い斑紋の中にヒメシジミのような青い点が見られないことが違います。

続いて♀。

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食草はマメ科のコマツナギ(Indigofera pseudotinctoria)で、ヒメシジミのようにキク科ではないことも違います。羽の表面はヒメシジミ♀同様黒っぽい色彩です。

ミヤマシジミはある種のアリに幼虫が守られ、巣の中でさなぎになるようです。ということは、食草のコマツナギだけでなく、守ってくれるアリの存在が生存には不可欠だということです。なかなか見ることがない理由がこういうところにあるのかもしれません。
 

もう1種は同じくシジミチョウ科のクロツバメシジミ(Tongeia fischeri fischeri

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こちらもかわいいシジミチョウです。ツバメシジミの名のとおり、後翅には細い尾状突起が付いています。ベンケイソウ科のツメレンゲ(Orostachys japonica)しか食べないと思っていたのに、ここのはベンケイソウ(Hylotelephium erythrostictum)にしっかり産卵していました。こちらは名前の通り羽の表側は♂も♀も黒っぽい色合いです。

チョウはここまで。続いてこれ以外に見られた昆虫です。

まずはハンミョウ科のミヤマハンミョウ(Cicindela sachalinensis

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ニワハンミョウ(Cicindela japana)やアイヌハンミョウ(Cicindela gemmata aino)ととてもよく似ていますが、こちらは高地に住み、上翅の白い斑紋も少しずつ違います。

同じく甲虫でコガネムシ科のコアオハナムグリ(Oxycetonia jucunda

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コアオハナムグリ自体は全くの普通種ですが、これはノーマルタイプの緑色の羽ではなく、赤銅型と呼ばれるタイプ。初めて見ました (A^^;)  ただ、やけに長くて粗い毛がたくさん生えているのがちょっと気になります。コアオハナムグリって、こんな毛だったっけ??? 花粉を食べている花は、キョウチクトウ科のイケマ(Cynanchum caudatum)です。

最後にクギヌキハサミムシ科のコブハサミムシ(Anechura harmandi)♂

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かっこいいハサミムシです。この種の♂には尾端のカギの形が2タイプあるようで、このように丸くなっているのをアルマン型、まっすぐに伸びているものをルイス型というそうです。

次は植物編の予定 (A^^;)
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